Monthly Archives: January 2016

セレンとコエンザイムQ10を摂取することで心血管死亡は防げるのでしょうか?

まさひろ@メディカル担当です.

今回はサプリメントに対する面白い論文を紹介いたします.

Reduced Cardiovascular Mortality 10 Years after Supplementation with Selenium and Coenzyme Q10 for Four Years: Follow-Up Results of a Prospective Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial in Elderly Citizens.
Alehagen U et al., PLoS One. 2015 Dec 1;10(12):e0141641.
PMID:26624886
PubMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26624886
PDF → http://www.plosone.org/article/fetchObject.action?uri=info:doi/10.1371/journal.pone.0141641&representation=PDF
全文フリーで閲覧可能です.

【論文は妥当か?】

【Patient】 NYHA class I 〜III の高齢患者443人(平均年齢78歳)
【Exposure】 セレン:200μg/日及びコエンザイムQ10:200mg/日の摂取(221人)
【Comparison】 プラセボの摂取(222人)
【Outcome】 10年後における心血管死亡
研究デザイン 2重盲検ランダム化試験
1次アウトカムは明確か 明確である
アウトカムの種類 真のアウトカム
盲検化されているか されているが, 詳細は記載なし
ランダム化は最後まで保持されたのか ITT解析の記載はなく, かつ29.1%の脱落率
試験期間 48ヶ月
追跡期間 10年間

【結果はどうか?】

アウトカム 介入群 コントロール群 HR(95%CI)
心血管死亡 46人/221人 86/222人 0.51(0.36-0.74)

【結果をどう活用するか?】
スウェーデンにおける研究報告です.
それまでサプリメントに対しては「摂取してもしなくても対して健康には差はない」という報告が多かった(というか殆ど)だったのですが,
どうもそれを覆すような成果が発表されました.
ただし, ITT解析でもなく, かつ脱落も多いため結果をそもまま鵜呑みにもできないように思います.
なおかつ, サンプルサイズの計算に関する記載もなし.
有意差がつくまでフォローしていたのではとも考えられます.
とはいえ, 散々サプリメントに対して否定的な報告しかなかった中でのこの結果は注目に値するでしょう.


JJCLIP#29 子供の熱さましの薬はアセトアミノフェンが一番なのでしょうか?

まさひろ@メディカル担当です.
薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせでございます.

平成27年度第10回薬剤師のジャーナルクラブ開催のお知らせ

開催日時:平成28年1月31日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
なお配信時間は90分を予定しております.

※ツイキャス配信はこちらから→http://twitcasting.tv/89089314

ツイキャス司会進行は、精神科薬剤師くわばらひでのり@89089314先生です.
ご不明な点などありましたら, 薬剤師のジャーナルクラブFacebookページから、又はtwitterアカウント@pharmasahiroまでご連絡いただけると幸いです.

[症例 26:子供の熱さましの薬はアセトアミノフェンが一番なのでしょうか?」

【仮想症例シナリオ】
あなたはとある街のドラッグストアに勤務する薬剤師です.
年始の忙しさもちょうど落ち着いてきた1月末, とある男性がお店を訪ねてきました.
「幼稚園に通う5歳の娘がまた熱っぽいんだ. これって以前小児科を受診させた時にもらった薬を飲ませた方がいいのかな?それともまた受診して、別の薬をもらった方がいいのかな?早く元気になってほしいんだよねぇ…」

[男性の情報]
いつも当薬局で日用品の買い物から本人、ご家族の処方箋調剤も受け付けている常連さん
奥さまと共働きで, 今日は自分が娘さんの幼稚園のお迎え当番

[娘さんの情報]
特に喘息などの現病はなし
二週間前に近隣の小児科から解熱剤としてカロナール®が屯用処方され, 現在も残薬が数回分あるとのこと

あなたは, 小児の解熱薬でカロナール®以外にも妥当なものがあるかどうか調べたところ,
ちょうどお目当ての論文を見つけることができたので, その場で早速読んでみることにしました.

[文献タイトルと出典]
Paracetamol plus ibuprofen for the treatment of fever in children (PITCH):
randomised controlled trial.
Hay AD et al., BMJ. 2008 Sep 2;337:a1302
PMID: 18765450
PubMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18765450
PDF → http://www.bmj.com/content/bmj/337/bmj.a1302.full.pdf
(全文フリーで入手可能)

[使用するワークシート]
ランダム化比較試験を10分で吟味するポイント:
http://j.mp/jjclipsheet1
@syuichiao先生のブログより)


新年あけましておめでとうございます.
今年もJJCLIPをどうぞ宜しくお願い申し上げます.

暖冬も暖冬である今日この頃, 皆様ご体調はいかがでしょうか.
インフルエンザが例年と比べ流行していないとはいえ, くれぐれもご無理のないように, です.

さて, 小児の解熱薬.
アセトアミノフェンが真っ先に思いつくのはいいとして,
「本当にそれが今も妥当なのか?」
「もしアセトアミノフェンが飲めなかったら, 何か他に代替案はないのだろうか?」
「そもそも小児の熱を冷ますこと自体がどこまで妥当なのだろうか?」

そんな臨床疑問から生まれたシナリオです.
エビデンスと実臨床をつなぐ架け橋へ.

いつものように, 放送中に頂くコメントへは随時お答えさせていただきます.
皆様にとって, 貴重で愉しい抄読会となれるよう鋭意努力いたします.

それでは, ネットの世界で皆様とお会いできることを心待ちにしております.

薬剤師のジャーナルクラブ(Japanese Journal Club for Clinical Pharmacists:JJCLIP)とは、薬剤師がEBMを実践するための学びの場を提供するSNSコミュニティです.現在は@89089314先生、@syuichiao先生、そしてわたくし@pharmasahiroの3名をコアメンバーとして運営しております.


WPW症候群患者ではアブレーションを受けた方が長生きできるのでしょうか?

まさひろ@メディカル担当です.

Radiofrequency ablation of accessory pathways in patients with the Wolff-Parkinson-White syndrome: the long-term mortality and risk of atrial fibrillation.
Borregaard R et al., Europace. 2015 Jan;17(1):117-22.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25013013
PMID:25013013
全文フリーで閲覧可能です.
PDF → http://europace.oxfordjournals.org/content/europace/17/1/117.full.pdf

【論文は妥当か?】

【Patient】 WPW症候群患者でアブレーション(ラジオ波焼灼療法)を受けた362人
【Exposure】
【Comparison】 比較コホート群3619人
【Outcome】 全死亡及び心房細動の発症
研究デザイン 後ろ向きコホート研究
アウトカムの種類 真のアウトカム
調整した交絡因子は? 年齢及び性別
研究期間 1990年〜2011年

【結果はどうか?】

アウトカム アブレーション群 コントロール群 HR(95%CI)
全死亡 19人(5.3%) 193人(5.3%) 0.77 (0.47–1.25)
心房細動 34人 (9.3%) 68 (1.9%) 4.77 (3.05–7.43)

*併存疾患により調整済み

【結果をどう活用するか?】
デンマークにおける研究結果です.
WPW症候群患者ではアブレーションを受けることで, 比較コホート(つまり健常人群?)と同等の寿命が得られるのではないかと考えられます.
ただし, これまではアブレーションを実施すればWPW症候群はほぼ完治可能で, 心房細動への進展も抑制できると思っていたのでが,
どうもそういうわけではない可能性も出てきました.
ただし, 後ろ向きコホート研究の結果ですので, 仮説生成という側面もあると思います.
今後はprospectiveな研究報告が待たれます.