Monthly Archives: August 2014

JJCLIP#12 溶連菌感染症に用いるべき抗菌薬とは?その2

まさひろ@メディカル担当です.

さて、今月も薬剤師のジャーナルクラブことJJCLIPの抄読会を開催いたします.

告知が大変遅くなってしまい申し訳ありません.

それでは、シナリオと文献を紹介致します.
設定と引用元は@syuichiao先生の
ブログより. いつも感謝です!


日時:平成26年8月24日(日)
21:00頃から90分ほどの放送を予定しております.
なお20:45頃よりテスト配信を兼ねた小放送も実施いたします.

配信は精神科薬剤師くわばらひでのり@89089314先生のツイキャスより行わせていただきます. いつも大変お世話になっております!

ツイキャスはアカウントさえあれば無料で視聴が可能です.かつリアルタイムでコメントを介したやりとりができます.
また、録音も自動で作られますので、聞き逃してしまった方でも後から視聴が可能です.


[仮想症例シナリオ]
あなたは小児科の処方箋を受けることの多い保険薬局の薬局長です。どうやら、溶連菌の感染症が流行しており、本日も込み合っています。あなたの薬局に今年の4月新入社員として配属された薬剤師のAさんは、だいぶ業務にも慣れて、今月から服薬指導も担当しています。午前の外来が終わり、MRさんの対応を済ませたあなたは、休憩室へ入ると、Aさんが話しかけてきました。

「薬局長、ちょっと質問よろしいでしょうか!岩〇先生の、抗菌薬の〇え方〇い方、という本にはA群“溶連菌は100%ペニシリンに感受性がある”と書いてありまして、溶連菌に関してはペニシリン耐性を考慮しなくて良いと思っていました。今日の溶連菌感染症の患者さん、小児ではパセトシン細粒(アモキシシリン)でしたけど、成人ではバナン錠(セフポドキシム)が出ていましたよね、あれってどうなんですかね。小児とおなじく、パセトシン錠でよいと思うのですが…。3世代セフェムって吸収も悪いし、そもそもグラム陰性菌狙いじゃないですか。理論的に考えたら余計な抗菌スペクトルもあるし、確かに服用回数は少なくて済みますが、あまり良い選択だとは思えないんですけど…」

確かに成人の溶連菌感染症患者さんにはバナン錠が処方されていました。投与量は400mg/日分2と添付文書上の最大用量でした。吸収が悪いとはいえバナン錠のバイオアベイラビリティは50%1)と3世代セフェムの中では良い方であり、そもそもペニシリンで10日間治療しても除菌失敗による再発が15%2) あると知っていたあなたは、成人での溶連菌感染症において、バナン錠での治療効果がペニシリンとくらべてどの程度差があるものなのか、Aさんと一緒にClin Infect Dis. 2004 Jun 1;38(11):1526-34. Epub 2004 May 11. PMID: 15156437を読んだところ、結局のところ、どちらが良いのか結論が出ませんでした。

このテーマは2人で共有するだけではもったいないと思い、Aさんは5店舗が集まるエリア会議の中で時間を少しもらい、このテーマに関するもう一つの論文を複数の薬剤師とともに読んでみながら、溶連菌治療に用いる抗菌薬はいったいどれを用いることが妥当なのか、議論してみることにしました。

1)バナン®錠インタビューフォーム
2)感染症レジデントマニュアル第2版(2013医学書院)

[文献タイトルと出典]
Different antibiotic treatments for group A streptococcal pharyngitis. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;4:CD004406  PMID: 23633318
Pubmed → http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23633318
Cochrane ↓
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD004406.pub3/abstract?systemMessage=Wiley+Online+Library+will+be+disrupted+9th+Aug+from+10-2+BST+for+essential+maintenance.+Pay+Per+View+will+be+unavailable+from+10-6+BST
PDF版はこちらから.


今回は前回抄読会からの続編となります.

一つの論文で臨床判断・決断することは滅多にありません.
ならば、複数の論文を、それもそれらの結果をまとめたメタ分析を読むのもよいでしょうと思ってこのメタ分析を選びました.

コクラン、73ページもの論文ですが、
これまでにJJCLIPを視聴してくださっている方々ならば、いつも通りの読み方をすればすぐに読破できるでしょう.
@syuichiao先生の、
メタ分析を10分で吟味するポイントをフル活用してください.

「コクラン、恐るるに足らぬわ!」

と、全員で声高らかに喝破しましょう.

それでは、皆様とネットの世界でお会い出来ることを愉しみにしております.

薬剤師のジャーナルクラブとは、薬剤師がEBMを実践するための学びの場を提供するSNSコミュニティです.現在は@89089314先生、@syuichiao先生、そしてわたくし@pharmasahiroの3名をコアメンバーとして運営しております.


アセタゾラミドの高山病予防投与に関する考察

まさひろ@メディカル担当です.

今回はJJCLIP特別企画ということで、さきほど@89089314先生がとある論文を読みつつ富士山登頂にという偉業を達成されました!おめでとうございます!!

その時に扱った論文がこちらです.

Identifying the lowest effective dose of acetazolamide for the prophylaxis of acute mountain sickness: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2012 Oct 18;345:e6779. doi: 10.1136/bmj.e6779.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23081689

全文が閲覧可能です → PDF

今回はこの論文についてまとめてみましょう.

【論文は妥当か?】

【Patient】 標高3000m以上の山に登る16歳以上の健常人
【Exposure】 登山時にアセタゾラミド 250mg/日、500mg/日、750mg/日を服用
【Comparison】 プラセボを服用
【Outcome】 高山病の予防[症状として頭痛、胃腸障害(食欲不振、悪心、嘔吐)、めまい、軽いふらつき、不眠、疲労が少なくとも一つ以上]の有無を、Lake Louise というスコアリングシステムを使用して評価]
研究デザイン メタ分析(11の論文を統合)
元論文バイアス 二重盲検ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ分析.・Randomised controlled trials assessing the use of acetazolamide at 250 mg, 500 mg, or 750 mg daily versus placebo in adults as a drug intervention for the prophylaxis of acute mountain sickness
評価者バイアス Two reviewers (EVL, AS) independently evaluated the quality of the included trials by using the Cochrane Collaboration’s tool for assessing risk of bias.
異質性バイアス ・To identify additional unpublished studies we corresponded with the primary author from each of the included studies and several of the excluded studies.・Heterogeneity among studies was low for the acetazolamide 250 mg and 500 mg subgroups.・When interpreting heterogeneity, I2 values less than 30% are considered as low heterogeneity, less than 60% as moderate, and greater than 60% as high.
出版バイアス ・No language restrictions were applied to the selection process.・To identify additional unpublished studies we corresponded with the primary author from each of the included studies and several of the excluded studies.・Publication bias was assessed by funnel plot (see supplementary fig 4).
利益相反 EVL and VG have received funding from the University of Nottingham to complete the study. No other funding was received for this study

【結果はどうか?】

アウトカム オッズ比[95%信頼区間]
急性高山病 0.36 [0.28-0.46]

それぞれの投与量に関するサブグループ解析もなされていました.

投与量 オッズ比[95%信頼区間] I2統計量
250mg 0.41 [0.26-0.64] 15%
500mg 0.37 [0.26-0.52] 0%
750mg 0.20 [0.10-0.41] 44%(統計的に有意に異質性あり)

さらに、個々の投与量に対するNNT (Numbers needed to treat)も算出されていました.

投与量 NNT[95%信頼区間]
250mg 6 [5-11]
500mg 7 [6-9]
750mg 3 [3-5]

【結果をどう活用するか?】
サブグループ解析ですが、異質性も低く、かつNNTも一桁という驚異的な数字です.
アセタゾラミドはそれほど高価な薬ではないこと、
高山病は高地肺水腫・高地脳浮腫を引き起こして、生命を脅かす恐れのある疾患であることを踏まえると、
予防投与することは全体として有益であるようにも思えます.
ただし、当然のことながら感覚異常などの有害事象も有意に増加していることは念頭において服用を考えるようにしたいものです.
頻尿も増加するとのことで、トイレが近い僕は正直服用しようかかなり迷います.
さらに、保険適応でもないことも覚えておかなければならないでしょう(予防ですから)

なお、JJCLIPでご一緒させて頂いております、@syuichiao先生のブログに詳細がありますので、ぜひそちらも参考にしてください.

@89089314先生、お帰りもどうかお気をつけて下山してください!


血液透析患者へのARB投与に関する考察

まさひろ@メディカル担当です.

本日はこんな論文を.

Effects of angiotensin receptor blockade (ARB) on mortality and cardiovascular outcomes in patients with long-term haemodialysis: a randomized controlled trial.
Nephrol Dial Transplant. 2013 Jun;28(6):1579-89. doi: 10.1093/ndt/gfs590. Epub 2013 Jan 25.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23355629
全文がフリーで入手可能です. → PDF

【論文は妥当か?】

【Patient】 高血圧を合併している慢性的血液透析469人(BP=140-199/90-99 mmHg)
【Exposure】 ARBであるオルメサルタン 10-40mg/日(235人)
【Comparison】 プラセボもしくはARB/ACEi以外の降圧薬の投与(234人)
【Outcome】 (ⅰ)死亡、非致死性脳卒中、非致死性心筋梗塞および冠動脈血行再建術(ii)全死因死亡の複合アウトカム
研究デザイン ランダム化比較試験
ランダム化されているか? されている
患者背景は同等か? 同等
盲検化されているか? single blind(アウトカム評価者をマスク=PROBE法)
サンプルサイズは十分か? されている
ランダム化は最終解析まで保持されているか? 追跡率100%で全例解析

【結果はどうか?】

アウトカム E群 C群 ハザード比[95%信頼区間]
プライマリ 68/749 (9.1%) 67/741 (9.0%) 1.00 [0.71 to 1.40]

*累積で計算しているため分母がそれぞれの群よりも多い数となっている

【結果をどう評価するか】
PROBE法であるにもかかわらず、冠動脈血行再建術(つまり手術)の項目がアウトカムに含まれていますが、
ARBに有利な結果とはなっていないため今回は目をつぶっておきます.

血液透析など、腎疾患を有する患者に対する文献を読むのは初めてでした.
高血圧のみを有するような患者だけでなく、こういった背景をもつ患者に対してもARBを積極的に使う理由はない模様です.