Category Archives: 論文抄録

セレンとコエンザイムQ10を摂取することで心血管死亡は防げるのでしょうか?

まさひろ@メディカル担当です.

今回はサプリメントに対する面白い論文を紹介いたします.

Reduced Cardiovascular Mortality 10 Years after Supplementation with Selenium and Coenzyme Q10 for Four Years: Follow-Up Results of a Prospective Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial in Elderly Citizens.
Alehagen U et al., PLoS One. 2015 Dec 1;10(12):e0141641.
PMID:26624886
PubMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26624886
PDF → http://www.plosone.org/article/fetchObject.action?uri=info:doi/10.1371/journal.pone.0141641&representation=PDF
全文フリーで閲覧可能です.

【論文は妥当か?】

【Patient】 NYHA class I 〜III の高齢患者443人(平均年齢78歳)
【Exposure】 セレン:200μg/日及びコエンザイムQ10:200mg/日の摂取(221人)
【Comparison】 プラセボの摂取(222人)
【Outcome】 10年後における心血管死亡
研究デザイン 2重盲検ランダム化試験
1次アウトカムは明確か 明確である
アウトカムの種類 真のアウトカム
盲検化されているか されているが, 詳細は記載なし
ランダム化は最後まで保持されたのか ITT解析の記載はなく, かつ29.1%の脱落率
試験期間 48ヶ月
追跡期間 10年間

【結果はどうか?】

アウトカム 介入群 コントロール群 HR(95%CI)
心血管死亡 46人/221人 86/222人 0.51(0.36-0.74)

【結果をどう活用するか?】
スウェーデンにおける研究報告です.
それまでサプリメントに対しては「摂取してもしなくても対して健康には差はない」という報告が多かった(というか殆ど)だったのですが,
どうもそれを覆すような成果が発表されました.
ただし, ITT解析でもなく, かつ脱落も多いため結果をそもまま鵜呑みにもできないように思います.
なおかつ, サンプルサイズの計算に関する記載もなし.
有意差がつくまでフォローしていたのではとも考えられます.
とはいえ, 散々サプリメントに対して否定的な報告しかなかった中でのこの結果は注目に値するでしょう.


WPW症候群患者ではアブレーションを受けた方が長生きできるのでしょうか?

まさひろ@メディカル担当です.

Radiofrequency ablation of accessory pathways in patients with the Wolff-Parkinson-White syndrome: the long-term mortality and risk of atrial fibrillation.
Borregaard R et al., Europace. 2015 Jan;17(1):117-22.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25013013
PMID:25013013
全文フリーで閲覧可能です.
PDF → http://europace.oxfordjournals.org/content/europace/17/1/117.full.pdf

【論文は妥当か?】

【Patient】 WPW症候群患者でアブレーション(ラジオ波焼灼療法)を受けた362人
【Exposure】
【Comparison】 比較コホート群3619人
【Outcome】 全死亡及び心房細動の発症
研究デザイン 後ろ向きコホート研究
アウトカムの種類 真のアウトカム
調整した交絡因子は? 年齢及び性別
研究期間 1990年〜2011年

【結果はどうか?】

アウトカム アブレーション群 コントロール群 HR(95%CI)
全死亡 19人(5.3%) 193人(5.3%) 0.77 (0.47–1.25)
心房細動 34人 (9.3%) 68 (1.9%) 4.77 (3.05–7.43)

*併存疾患により調整済み

【結果をどう活用するか?】
デンマークにおける研究結果です.
WPW症候群患者ではアブレーションを受けることで, 比較コホート(つまり健常人群?)と同等の寿命が得られるのではないかと考えられます.
ただし, これまではアブレーションを実施すればWPW症候群はほぼ完治可能で, 心房細動への進展も抑制できると思っていたのでが,
どうもそういうわけではない可能性も出てきました.
ただし, 後ろ向きコホート研究の結果ですので, 仮説生成という側面もあると思います.
今後はprospectiveな研究報告が待たれます.


JJCLIP夏のエビデンス感想文

まさひろ@メディカル担当です.
先日のJJCLIP2周年特別企画, 「夏のエビデンス感想文祭り」
ご参加いただきました皆様, 誠にありがとうございました.

そして, 感想文を作成・送ってくださった先生方, 心より御礼申し上げます.

…ふと, 自分も感想文を作ってみたくなったので, 実行してみまして.
時期外れ, かつひどい論文ですが(汚物は焼却だぜぇ?←),
どうか何かのネタにでもしていただければ.

「水素水の飲めばメタボを予防できるんかいコラァ!」

J Lipid Res. 2013 Jul;54(7):1884-93.
Hydrogen-rich water decreases serum LDL-cholesterol levels and improves HDL function in patients with potential metabolic syndrome.
Song G1, Li M, Sang H, Zhang L, Li X, Yao S, Yu Y, Zong C, Xue Y, Qin S.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23610159
PMID:23610159

【論文のPECO】

P 台湾におけるメタボの懸念のある43歳以上の患者20人(男性12人, 女性8人*)
E 水素水の消費(濃度0.2〜0.25mMの水素水を0.9〜1.0L/日を1日1回もしくは2回に分けて消費)
C 水素水の消費前
O 血清リポプロテインの値は改善するのか?

*25≦BMI≦34.9, 腹囲100cm以上(男性),80cm以上(女性)

追跡期間:10週間

【結果】

アウトカム 水素水消費前 水素水消費後 改善度(P値)
血清LDL-C値(mM) 3.96 ± 0.86 3.24 ± 0.68 0.72 (P < 0.05)
血清TC値(mM) 6.42 ± 1.13 5.47 ± 0.75 0.95 (P < 0.01)

平均して27.8mg/dlのLDL-C値の改善
平均して36.7mg/dlのTC値の改善

【感想】
代用のアウトカムかつ明確ではない(TC, TG, LDL, HDL, glucose…etc)
→ 偶然に左右された可能性大
ランダム化されていない・前後比較!(not 群間比較!)
ブラインドもされていない
サンプル数20で適切かどうかもわからない

水素水に関しては他にもいろいろと体にいいという報告があるが, どれも有料の雑誌なので断念.
(かつどれも代用のアウトカムではある)

健康食品の一つと位置付ければ, 医療費抑制のための手段の一つとして考慮してもよいのかもしれない. しかし, 内的妥当性が低いため即座に水素水の普及をしようという気にもなれない. もやもや


軽度から中等度CKD患者へのスタチン投与で心臓の病気を減らせるのか?

まさひろ@メディカル担当です.

今回はこんな論文を.

Effect of statins on cardiovascular events in patients with mild to moderate chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials.
Zhang X, Xiang C, Zhou YH, Jiang A, Qin YY, He J.
BMC Cardiovasc Disord. 2014 Feb 17;14:19.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24529196
PMID:24529196

全文が閲覧可能です → PDF

【論文は妥当か?】

【Patient】 軽度から中等度の慢性腎障害患者
【Exposure】 プラバスタチン, シンバスタチン, アトルバスタチン, ロバスタチン, ロスバスタチンを投与
【Comparison】 プラセボもしくはビタミン剤などスタチン以外の薬を投与
【Outcome】 心血管疾患、総死亡、心筋梗塞、脳卒中、心血管死、および薬物関連有害事象
研究デザイン メタ分析(12の論文を統合)
元論文バイアス 二重盲検ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ分析.
評価者バイアス 2名の評価者が独立して評価・Data extraction and collection were performed independently by two reviewers
異質性バイアス 主要評価項目では異質性は確認されず(I2統計量で異質性を評価)・Heterogeneity of treatment effects between trials was evaluated by the Q test and I-squared (I2) statistic
出版バイアス 公表された英語論文のみを使用. 出版バイアスは完全には除けてはいない・publication bias was unavoidable in our study
利益相反 The authors declare that they have no competing interests.

【結果はどうか?】

アウトカム 相対危険(95%CI) 異質性(I-squared)
心血管疾患 0.76(0.72-0.80) 20.1%
総死亡 0.79(0.72-0.86) 6.3%
心筋梗塞 0.66(0.52-0.83) 0%
脳卒中 0.70(0.57-0.85) 0%
心血管死 0.83(0.73-0.93) 0%
薬物関連有害事象 0.63(0.03-12.59) 47.1%

【結果をどう活用するか?】
リスク減少に関しては有意差はついていても, アウトカムが複数あって明確かどうかは不明です.
5つ以上のアウトカムでは偶然有意差がついた可能性も否定できないように思えます.

また, メタ分析の4つのバイアスも完全には除去できてはいない模様です.

そう考えると, 結果は一見綺麗ですがやはり実臨床では効果を割り引いて適応させるべきかと.


2型糖尿病患者のHbA1c, 収縮期血圧, LDL-C値コントロールはどれくらいが妥当なのか?

まさひろ@メディカル担当です.

実に数ヶ月ぶりの論文抄録です.
更新が滞ってしまい, 大変申し訳ありません.

今回のお題論文はこちらです↓
All-cause mortality in patients with type 2 diabetes in association with achieved hemoglobin a1c, systolic blood pressure, and low-density lipoprotein cholesterol levels.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25347712
こちらは全文フリーで論文が手に入ります. → PDF

【論文は妥当か?】

【Patient】 台湾にて2型糖尿病に罹患した18歳以上の患者12,643人
【Exposure】 HbA1c, 収縮期血圧, LDL-C値のコントロール幅
【Comparison】 比較なし
【Outcome】 全死亡
研究デザイン A retrospective cohort study(後ろ向きコホート研究)

【結果は何か?】
得られたデータを解析した結果, A1c, 収縮期血圧(SBP, mmHg), LDL-C(mg/dl)と全死亡とはU字カーブの関係を示し,
以下の値の範囲にコントロールすると最も全死亡を低くコントロールできた.

項目 コントロール範囲 相対リスク比(95%CI)
HbA1c(%) 7.0–8.0 0.69 (0.62–0.77)
SBP (mmHg) 130–140 0.80 (0.72–0.90)
LDL-C (mg/dL) 100–130 0.68 (0.61–0.75)

*年齢・性別の他に, 心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、悪性新生物、慢性腎疾患の既往、
インスリン使用、降圧薬の使用、任意の脂質低下薬、抗血小板薬の使用といった交絡因子で調整済み

【結果は役に立つか?】
2型糖尿病に関しては以前から言われている通り, 厳格な血糖, 血圧, 脂質コントロールはむしろ有害であるということを裏付ける結果ではないでしょうか.
観察研究ですが, 非常に貴重な報告であると思っております.